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耳鳴りと聞こえを数字で測る。THI(耳鳴苦痛度質問票)と耳こすりテスト

「なんとなく楽になった」ではなく、数字で確かめる。当院が耳鳴りと聞こえの経過を追うために使っている質問票と簡単なテスト、そして耳鼻咽喉科の聴力検査との役割分担を説明します。初回に基準をとり、10回ごとに同じ物差しで測り直します。

公開 更新 症状:耳鳴り・難聴・聞こえにくさ

THI(耳鳴苦痛度質問票)の見方

THI(耳鳴苦痛度質問票)の25問・0〜100点の仕組みと、軽度・中等度・重度・非常に重度の4段階、変化の目安を示す図解
THIは25の質問で苦痛度を0〜100点にします。20点以上の減少、または16点以下が変化の目安です。

この記事の要点

  • 聴力そのものは、耳鼻咽喉科の聴力検査が物差しです。鍼灸院で聴力を測ることはできず、検査結果の控えをお持ちいただきます。
  • 耳鳴りの苦痛度は、25の質問に答える質問票(THI・ティーエイチアイ)で0〜100点にします。20点以上の減少、または16点以下が変化の目安です。
  • 聞こえの左右差は、両耳の前で指をこする耳こすりテストで、前回との違いを見ます。初回に基準をとり、10回ごとに測り直します。

この症状の正体

耳鳴りと聞こえにくさは、本人にしか分からない症状です。だからこそ「良くなったかどうか」も本人の感覚に頼りがちで、良くなった日と悪い日の波に振り回されます。鍼灸を続けるかどうかを決めるには、同じ物差しで繰り返し測ることが欠かせません。

当院が使う物差しは3種類です。耳鼻咽喉科の聴力検査(聴力そのもの)、耳鳴りの苦痛度の質問票(生活への影響)、耳こすりテスト(聞こえの左右差の目安)。それぞれ測るものが違い、どれか1つでは足りません。

聴力検査は、耳鼻咽喉科で行う純音聴力検査が基本です。いくつかの周波数ごとに、どのくらい小さな音まで聞こえるかをデシベルで測ります。突発性難聴の回復の判定も、この検査の5つの周波数の平均で決まります。鍼灸院では測れないため、検査結果の控えをお持ちいただき、治療の前後で数字がどう動いたかを一緒に見ます。

なぜ鍼灸が関わるのか

鍼灸院が測ることに関わる理由は、鍼灸の目標が聴力の数字そのものではない場合が多いからです。突発性難聴の発症直後なら聴力の回復が目標になりますが、治療後に残った難聴や、慢性の耳鳴りでは、目標は「耳鳴りの苦痛度」「聞き取りの負担」「睡眠」に移ります。耳鼻咽喉科の検査だけでは、この部分の変化が見えません。

質問票で測る苦痛度は、音の大きさとは別のものです。同じ大きさの耳鳴りでも、気にならない人と眠れない人がいます。鍼灸やカウンセリングが働きかけるのは、この「つらさ」の部分なので、苦痛度を測らなければ変化を確かめられません。

耳鼻咽喉科の治療後も難聴と耳鳴りが残った方への鍼の研究では、聴力の数字は変わらなかった一方で、言葉の聞き取りと耳鳴りの苦痛度は改善していました。もし聴力しか測っていなければ「変化なし」で終わっていた変化です。何を測るかが、何を目標にするかを決めます。

鍼灸の前に確かめること

初回に、次の基準をとります。

  • 耳鼻咽喉科の聴力検査の結果(控えをお持ちください)。受けていない方は、先に受診をお願いします
  • 耳鳴りの苦痛度の質問票(THI)。25の質問に「はい」「ときどき」「いいえ」で答えます
  • 耳鳴りの音の大きさ。0〜10の目盛りで、いまの大きさを示していただきます
  • 耳こすりテスト。両耳の前で指をこすり、聞こえ方を左右で比べます
  • 生活の指標。この1週間で眠れた日数、集中できた時間、気分の落ち込み

どこに、どういう狙いで鍼をするか

この解説は測り方が主題なので、測る手順を書きます。

耳鳴りの苦痛度の質問票は、THIという国際的に使われている25問の質問票の日本語版です。「耳鳴りのせいで集中しにくいですか」「耳鳴りのせいで夜眠りにくいですか」「耳鳴りのせいでいらいらしますか」といった質問に、はい(4点)、ときどき(2点)、いいえ(0点)で答え、合計を0〜100点にします。点数の目安は、0〜16点が軽度、18〜36点が中等度、38〜56点が重度、58〜100点が非常に重度です。

変化の目安は、日本語版の研究で「20点以上の減少、または16点以下になること」とされています。当院もこの基準を使い、10回目の測り直しでここに届いたかどうかを見ます。

THI(耳鳴苦痛度質問票)の見方

THI(耳鳴苦痛度質問票)の25問・0〜100点の仕組みと、軽度・中等度・重度・非常に重度の4段階、変化の目安を示す図解
THIは25の質問で苦痛度を0〜100点にします。20点以上の減少、または16点以下が変化の目安です。

耳こすりテストは、聞こえの左右差を見る簡単な目安です。手順は4つです。

  1. 椅子に座り、力を抜きます
  2. 両耳の前で、親指以外の指をこすります
  3. そのこすった音の聞こえ方を、片耳ずつ確かめます
  4. 右耳と左耳の聞こえ方の違いと、前回との違いを比べます

評価のポイントは、聞こえ方がはっきり感じられるか、左右差がないか、前回と比べて変化があるかの3つです。こすった音がはっきり聞こえれば○、ぼんやりしている、または聞こえにくければ△と記録します。これは聴力検査の代わりではなく、通院のたびに同じ方法で変化を見るための目安です。

耳こすりテスト(聞こえの左右差を見る目安)

椅子に座って力を抜き、両耳の前で指をこすり、片耳ずつ聞こえ方を確かめ、左右と前回を比べる4つの手順の図解
耳こすりテストの4つの手順。聴力そのものは耳鼻咽喉科の聴力検査が物差しで、これは変化を見る簡単な目安です。

時期と通い方の目安

初回に基準をとり、施術10回ごとに同じ物差しで測り直します。突発性難聴の発症直後は週2〜4回、耳鳴りは週1〜2回が目安です。この測り直しは鍼灸の変化を見るためのもので、聴力の評価は主治医の予定どおりに耳鼻咽喉科の検査で受けてください。

10回目の測り直しでは、質問票の点数、音の大きさの目盛り、耳こすりテスト、眠れた日数、そして耳鼻咽喉科の最新の聴力検査の結果を並べます。変化があれば継続、なければ部位と目標を見直します。20回で目標に届けば間隔を空けて維持に入り、届かなければ続け方を主治医と相談します。途中でも、聞こえが落ちた、耳鳴りが急に変わった、めまいが出たときは、回数を待たずに耳鼻咽喉科を受診してください。

測った結果は記録に残し、ご希望があれば耳鼻咽喉科との情報共有にも使います。鍼灸院で何をしてどう変わったかを主治医が知っていると、治療方針の相談がしやすくなります。

分かっていること(研究の報告)

  • THI(耳鳴苦痛度質問票)の日本語版は、信頼性と妥当性が確かめられています。改善の目安は「20点以上の減少、または16点以下」です。
  • 突発性難聴の回復の判定基準は、5つの周波数の平均で、20デシベル以内に戻れば治癒、30デシベル以上の改善で著明回復、10〜30デシベルで回復、10デシベル未満で不変です。耳鼻咽喉科の検査で判定します。
  • 耳鼻咽喉科の治療後も症状が残った方への鍼の研究では、聴力は不変、語音弁別能(言葉の聞き取り)とTHIは改善という結果でした。測る項目によって見える変化が違う例です。

ポイント

耳鳴りの苦痛度は、音の大きさを測るものではありません。同じ音でも、気にならない時間が増えれば点数は下がります。当院が目標にするのは、この点数と、眠れた日数です。

あわせて行うこと

  • 眠れた日数と、耳鳴りが気にならなかった時間を、カレンダーに一言ずつ記録する。波があることが分かると、悪い日に振り回されにくくなります
  • 耳鼻咽喉科の聴力検査は、主治医の指示どおりに受ける。鍼灸を始めたことを理由に検査を飛ばさない
  • 検査結果の控えと、お薬手帳を通院時にお持ちください
  • 質問票の点数が下がらなくても、眠れた日数が増えていれば、それは変化です。両方を見ます

測り方の土台にある耳鳴りの仕組みは、耳鳴りと鍼灸の解説に、教育的カウンセリングと音響療法の進め方は別の解説にまとめています。